一人と一人で暮らす
私は夫と同居している。
社会的に言えば婚姻関係にあたるらしい。
面倒なことを省いて残りの時間を送りたいので、お互いに今の状態を享受している。
定年し、再雇用の夫も土日は休み。
だが、この土日は彼の休みであって、私には無関係。昼間、家の中をウロウロされるのは嫌だが、幸いにも自室にいる事が多い。
毎朝の犬の世話だけが、彼の家の仕事である。
休みでもそれが終われば、ほかにやる事はない。自室にこもる。
私はいつも通りの家事をやる。
洗濯、掃除、買い物、畑仕事、無人販売の野菜採り、その間に手芸、映画など。
夫の部屋は玄関脇なので、私がバタバタと行ったり来たりしているのを、聞いているのかいないのか。
お昼近くなると、夫は黙って出かける。
2時頃帰ってきて部屋にこもる。
私は昨日の残飯整理で昼食を済ませ、夕飯の準備を済ませておく。
洗濯物を取込み、犬の散歩や世話も終えた頃、夫は部屋から出てきて、あれ?散歩行ったの?と聞く。うん、と答える。
お前の部屋の前を犬が通ってたよな!と思う。
風呂の支度をし、夕飯をあらかた作り、日が沈む頃に私はウォーキングに出かける。
天気が良い日は富士山のシルエットが見えて、今日も一日元気で過ごさせてくれてありがとう😊と思う。
6時頃に夫は風呂に入り、酒を飲み始める。
テーブルに食事を並べ、私は先に食べ、手芸の続きを始める。
テレビの嬌声に独り言を言う夫。
私は話さない。TVも夫も面白くないから。
早く、食べ終わってここからいなくなってほしい。それだけ。
酒を飲むと一人でベラベラうるさい。
犬をかまったり、TVに突っ込みを入れたり。
私はどんどん白けていき、しまいには露骨にイヤな顔になる。
夫の一人舞台が終わり、お先にと部屋に引き上げる。やっと本日の苦行終了、と思う。
この食事の2時間程が苦痛でたまらない。
くだらない事を喋り続ける夫、聞こえないふりして(目の前にいるのに)黙ってる私、全身で拒絶を表しているのに、なかなか引き上げてくれない。
とはいえ、私は一人で幸せに暮らしている。
畑の野菜は新鮮で美味しい。
夫も優秀な家政婦がいて幸せだろう。